アジア太平洋地域でワイドボディ機マーケットが活況

近年のアジア太平洋地域における航空業界で最も顕著な傾向のひとつは、LCCによるナローボディ機の大量発注です。

しかし、2024年は、航空各社が長距離路線向け機材の補充を進めていることから、ワイドボディ機の発注も増加しています。

これは、パンデミックからの回復後、国際線マーケットが再び活況を呈していることと、多くの航空会社が旧式のワイドボディ機を退役させた結果、機材不足に陥っていることが一因です。ただし、これらの発注は過去4年間に棚上げされていたワイドボディ機の機材更新計画の再開を受けてのことであり、長期的な視点で進められているものです。

CAPAのデータによると、アジア太平洋地域におけるナローボディ機の発注数は5,714機に上ります。これは、同地域の航空会社によるワイドボディ機の現在の総発注数567機を大幅に上回るものです。

2023年には、インディゴ航空、エア・インディア、アカサ・エアによる合計1,000機に及ぶ大量発注により、ナローボディ機の発注数が大幅に増加しました。同年、アジア太平洋地域の航空会社がエアバスとボーイングに発注したナローボディ機は合計1,200機以上に上りますが、ワイドボディ機の発注は約200機にとどまっています。

2024年初頭時点では、ナローボディ機の発注は続いているものの、ワイドボディ旅客機の発注がいくつか発表され、今後もさらに予想されていることから、より均衡していく見込みです。

最近では、3月21日にJALと大韓航空が発注計画を明らかにしました。JALは主に国際線向けにA350-900を21機、787-9を10機発注すると発表し、大韓航空はA350-1000を27機、A350-900を6機発注する予定です。

これらの契約に先立ち、シンガポール航空ショーでは、ベトジェット航空がA330neoを20機、ロイヤル・ブルネイ航空が787を4機、台湾のスターラックス航空がA330neoを3機とA350Fを5機など、複数のワイドボディ旅客機の発注が発表されました。また、ショーの直前には、非公表だった45機の787がタイ航空向けであったことが判明しました。

さらなるワイドボディ機の発注も予定されています。マレーシア航空は第3四半期までに、A330neoをさらに20機追加するオプションを行使するかどうかを決定するとみられ、香港のキャセイパシフィック航空は中型ワイドボディ機の大量発注を検討中です。他の航空会社からも、年間を通じて発注がなされるでしょう。

しかし、最近のワイドボディ機の活発な動きは注目に値しますが、アジア太平洋マーケットにおけるナローボディ機優位の長期的傾向にはほとんど影響しないでしょう。

CAPAおよびOAGのデータによると、3月25日の週にアジア太平洋地域で運航された民間機の約58%がナローボディ機でした。ワイドボディ機は18.2%を占め、リージョナル機やターボプロップ機など、その他のカテゴリーが残りを占めています。発注機数に占める割合はさらに大きく、ワイドボディ機の8.3%に対し、ナローボディ機は全体の83.6%を占めています。これは、ナローボディ機とワイドボディ機の発注数の格差が拡大していることを示しています。

なお、アジア太平洋地域の航空会社が運航するワイドボディ機のシェアは、エアバスの44.2%に対し、ボーイングが55.8%と優位です。これは、エアバスが57%、ボーイングが42.8%を占めるナローボディ機の状況とほぼ正反対の状態です。発注数で見ると、同地域のワイドボディ機発注数の61.4%をボーイングが占めています。

また、同地域で最も多く発注されているワイドボディ機は787で、全体の43.6%を占めています。次いで、A350が26.5%、777が17.5%、A330が12.2%となっています。

この地域で運航されている1,985機のワイドボディ機のうち、1,690機が旅客機です。残りは主に貨物機で、その他少数のVIP機、空中給油機、空中警戒機などが含まれています。

ワイドボディ旅客機の総数は、パンデミック発生前の2020年1月の1,800機を未だ下回っています。これは、これまでの間に新規納入機数を上回る退役機数があったことを意味しており、最近のワイドボディ機マーケットが好調である理由を示しています。