Changes In The Engine Leasing Market | エンジンリース市場に起きている変化
June 23, 2021
昨年はコロナ危機により、膨大なフリートが飛行停止に追い込まれた。多くのMRO事業者は機体修理や貨物機整備で事業を継続させたものの、業務量は激減した。最も影響が大きかった分野のひとつはエンジンの定期整備で、これは航空会社が高額なオーバーホールを延期または中止したことが要因だ。 5月にAviation Weekが開催したオンラインイベント「Engine Leasing Trading and Finance」では、4つの重要な見解が提示された。
1. 航空会社はリース契約を再交渉し、グリーンタイムが残されたエンジンの活用を模索
Credit: Sun Country
アメリカを拠点とするLCC、Sun Country Airlinesはリース会社と既存契約の再交渉を行った。ミネアポリスに本社を置く同社は、31機のボーイング737で運航される旅客便と、2020年5月からAmazon Airと共同運航している12機の貨物機を運航している。同社の社長兼CFO・Dave Davis氏は「定期便が最も大きな打撃を受け、2020年4月の旅客便予約数は前年比90%減となった」と話す。 ただし、Davis氏によると、旅客数は減少したものの貨物事業は成長したため、会社全体としての事業は縮小しなかったという。しかしコスト削減のため、同社は既存リース契約の再交渉を行った。彼は「我々は既存リースの延長は望んでおらず、その代わり支払いを2020年末〜2021年初頭に延期した」と述べた。 また、同社は機材の新規発注はしておらず、中古の737-800の購入を検討しており、「中古市場には多くの機体が出回っている。我々は購入に前向きで、多くの機体に入札している」と彼は話す。さらに、中古エンジンや中古部品の購入、グリーンタイムが残ったエンジンの活用にも積極的で、保有機への搭載や部品取り用としてのCFM56-7Bエンジンの調達を進めている。
2. リース会社は短期のエンジンリースが増えると予想
Credit: Pratt & Whitney
リース市場においてエンジン分野が回復するのは機体分野よりも遅くなるとされているが、航空会社がエンジンの高額な工場整備を延期する傾向にあるため、短期のエンジンリースが今後12〜18ヶ月で増加するとみられる。 「航空会社はエンジンの工場整備に多額の費用をかける代わりに、エンジンをリースする可能性が高い。その方が短期的には安上がりになるからだ」と話すのは、Shannon Engine Support社の上級副社長兼セールス・マーケティング統括を務めるTadhg Dillon氏だ。 「もし航空会社が工場整備を必要とするエンジンを保有していたとしたら、賢明なリース会社であればそのエンジンを整備し、再び機材に搭載するための確実な方法を提案するだろう。航空会社の視点で見たとき、所有するエンジンに500万ドルかけてオーバーホールするのと、12〜18ヶ月の短期リースを行い、コロナ危機が落ち着くまで資金を温存するのと、どちらがベターだろうか?多くの航空会社は短期リースを選択している」と同氏は話す。
3. 信頼性向上と所有コストの見直しを進めるエンジンメーカー
Credit: Delta TechOps
昨年は各メーカーも、生産数の減少やアフターマーケット事業の中断により大きな打撃を受けた。その中でもエンジン分野は特に顕著で、工場整備の延期やキャンセルによる影響は深刻であった。しかし、一部のメーカーはマーケットが停滞している間に、信頼性や所有コストにまつわる問題に対処する機会を得た。いずれも航空会社からは困難な課題と受け取られているものだ。 ロールスロイス社は、MRO業務量が約11%減少したことを受けて、Trentエンジンプログラムの改修計画を進めることにした。この中には、2019年にファンブレードに関する技術的な問題が発生し、改修に着手していたTrent 1000も含まれている。「パンデミックの中で、AOG時間を増やすことなく速やかに改修作業を進めることができた」と話すのは、同社のマーケティング担当上級副社長を務めるRomain Chambard氏だ。 所有コストについては、既存サービスに特定のニーズにマッチするより柔軟性の高いサービスを追加することで対応を進めたと同氏は話す。この中には、航空会社が修理範囲を個別に指定できる「SelectCare Repair」サービスなどが含まれる。Chambard氏によると、これがロールスロイス流の「市場に適応し、航空会社やリース会社が望むサービスを見極める方法」だという。
4. 投資家からの信頼は回復するか?
昨年の航空業界は、大量の運休・航空会社の財務リストラ・レンタルの延期・資産の早期回収・流通市場の不振・メーカーへの打撃など、多くの悪影響に見舞われた。業界が長期的な回復に向かうためには、大きく損なわれた投資家からの信頼を回復することが必要不可欠だ。 しかし、信頼回復のためには航空輸送需要の回復が大前提となる。三菱UFJ銀行でヨーロッパ・中東地域の航空部門担当ディレクターを務めるSimon Finn氏は、新型コロナウィルスは前例のない危機だったという。彼は、投資家の信頼は乗客の信頼に似ているとし、「制限が緩和された地域では、投資家も乗客も新型コロナウィルスの存在や、ワクチン接種を進める上でのハードルをそれほど意識していないことが注目されている」と話す。 最終的には、ある一定の方法で事業を展開している企業が投資家を惹きつけることになると彼は考えており、「フットワークが軽く、迅速な経営管理を行い、最高のビジネスモデルを持つ企業が投資家にとって最も魅力的に映るだろう」と述べた。